150年以上の歴史を持つ
美しい自然に育まれた、
ぶどうの産地。
広島県竹原市の市街地から、つづら折りの坂道を車で登ること10分。
山に囲まれ、初夏にはホタルが舞う小梨町の山間部にひっそりと佇んでいるのが、「八天堂ファームのぶどう園」です。
竹原市は、150年以上前から栽培が続いているぶどうの産地。豊かな土壌と水はけの良さ、気温差の大きな環境に育まれて、甘く、実の大きなぶどうが育てられてきました。

オーナー不在になったぶどう畑を、
生きがいや希望を生み出す
福祉の場に。
そんな竹原の中に、継承者がいないため、オーナー不在となってしまったぶどう畑がありました。くりーむパンで有名な八天堂が「農業と福祉を組み合わせた、生きがいを生み出す農園をつくろう」とこの畑を譲り受け、2021年の4月から、本格的に八天堂ファームの葡萄づくりがはじまったそうです。
めざしているのは、人と自然と葡萄が繋がり、循環していくぶどう園。美味しい葡萄をつくることだけでなく、生きづらさや働きづらさを抱えている方への就労訓練事業としても、社会に貢献していくことを大切にしています。

マニュアルなしで
名もなき苗木を育ててきた
「葡萄の声を聴く達人」、弓場さん。
そんなぶどう園の栽培の指揮をとっているのが、30年以上国の研究機関で苗木の育成に携わってきた、弓場さん。勤めていた安芸津にある研究機関は、全国でも人気の高いシャインマスカットを生み出したことで有名です。
まだ名前もない開発中の無数の苗木たちを、マニュアルがない状態で、様子を観察しながら手探りで育てていく。『3年くらいかけて実際に実がなるまで、どんな味になるのかは分からない。だから、少しずつ違う苗木を毎年たくさん植えていくんです。』それぞれの木が、どう育っていくのかは全くの未知数。一本一本の苗木と向き合いながら工夫を凝らしていく積み重ねが、葡萄の状態を見る確かな目につながっているのを感じました。
お話を伺いながら「まさしく、葡萄の声を聴く達人ですね」とお伝えしたとき、『状態が悪いと、大切に育ててきた苗木もすぐ廃棄になってしまうからね。力が足りずに、悔しい思いをすることも多かったよ』と話してくださった弓場さん。
愛情をもって一つひとつの樹に向き合う姿勢のようなものが、言葉の端々から伝わってきました。

研究機関とも連携しながら
トライ&エラーで、
さらなる品質を。
『30年以上勤めてきたからね、今でも研究所の仲間から、いろんな情報をもらっています。毎年、新しい工夫を取り入れていくようにしているんですよ。』
今年はクイーンニーナの袋を透明なものに変えて、色味を濃く、美しくすることに成功。可愛らしいけれど深みもあるピンク系の微妙に違う色合いは、眺めるだけでも美味しそうです。ピオーネ、シャインマスカット、クイーンニーナ、ナガノパープル、瀬戸ジャイアンツなど、さまざまな品種の葡萄に挑戦しています。

育成の難しい超大玉品種、
グロースクローネの
弾ける美味しさ。
そんな弓場さんの一番のおすすめ品種を聞いてみました。『僕がいちばん勧めたいのは、“グロースクローネ”だね。一粒一粒がとても大きくて、食べ応えがある。しかもね、すごく美味しいんですよ。』
差し出されたピンポン玉を超えるくらいの大きな実に齧り付くと、プリッとした弾力のあと、まるで梨を食べたときのように果汁が口の中に溢れ出てきました。
実はこの品種、安定した品質のものが収穫できるようになるまで10年はかかると言われている、希少なもの。『まだ5年目だけれど、今年はうまく実が育っていってね。割れたものも出てしまったけれど、皆さんのところに少しは届けられると思うよ。』
弓場さんと八天堂ファームのぶどう園の挑戦は、これからもまだまだ、続いていきそうです。















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